南アルプスの尾根を歩く

この写真を撮った1時間くらい前、山小屋の近くで、日の出の直後に、しらないおじさんがおれに向かって「ブロッケーン!」と叫んできました。「はい?」「ブロッケン!」

意味がよくわからずあたりを見渡してみると、朝日に照らされて霧に伸びた自分の影の周りにリング状の虹が出ていることに気づきました。そこでようやく、「ブロッケン」の意味が、いまの状態を表す山岳特有の気象現象であるとインターネットで見た「ブロッケン現象」だったことを理解したのでした。ブロッケン現象というものを、おれはこのとき初めて目撃したのです。

山には不思議な一体感があります。おれも短い登山人生で、すれ違う人に「さっきそこでヒグマに会ったよ」とか、「もうすぐ山頂ですよ」とか、「登山口の近くにいい温泉は無いですか」とか、いろいろと声をかけられたことがあります。そして、べつにおれは外向的な性格でもないのに不思議と会話が盛り上がるのです。山にいる高揚がおれたちに一体感を与えるのかもしれません。

それから一時間くらい尾根を歩くと、今度は太陽の周りに虹が出ました。おれはこの気象現象の名前を知らないけど、あのおじさんはどこかでこの現象の名前を叫んでいたに違いありません。

Canon EOS 60D│49mm, f8, 1/4000, ISO100│2016年9月撮影

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